オーダーに至るまでの詳細やオーダー方法は前回の記事をご覧ください.
オーダーしてから待つこと約2か月
年末年始をはさんだことにより,通常の納期(1か月)よりやや長くなりましたが,オーダーしたスラックスがはるばるイタリア・ナポリから僕の手元にやってきました.
では早速みていきたいと思います.
生地
そもそもCovert cloth(カバートクロス)って??
梳毛 (そもう) 織物の一種。縦に濃淡2色の霜降りの双縒糸 (よりいと) 、横に濃色の単糸を使い綾織り、あるいはしゅす織りしたもの。主にコート・冬用のスーツ・乗馬服用。薄手の綿製のものは作業衣・制服などに用いる。
引用元 goo辞書
もともとは狩猟用に作られた生地で,耐久性・耐水性が高い生地とされています.よって硬くしっかしと織られた生地となり,下の画像のように綾目模様が特徴となります.
ガッシリとした生地のスラックスが欲しかった僕にとってはもってこいの生地となります.
ウール100%となります.
画像ではやや白っぽく写っていますが,実物はダークグレーというだけあってもう少し暗めの色となります.
全体像
裾に向かって細くなるテーパードシルエットになります.2プリーツということもあり,腰回りはおじさんには程よいゆとりです.センタークリースの影響で裾幅がかなり細く見えますが,実際は太すぎず細すぎずの中庸なシルエットです.
真横から見た画像からだと太すぎず細すぎずシルエットであることがよく分かると思います.
よくナポリ仕立てのパンツは足の曲線にあわせてS字にカーブしているって表現されることがありますが,パターンオーダーということもあってか,そのようなラインではありません.
着画ではないので生地が余っているように見えますが,実際に着用するとそのラインは非常に美しいです.まさに着用した方が美しく見える洋服の典型的な例であるといえるでしょう(今回の記事に着画はありません,すみません).
本当は太いカバートクロスのパンツが穿きたいけど,身長が高くない上に痩せているので,カバーオールやカーコートみたいな着丈がやや長めの洋服を着用した際のシルエットがこれくらいの太さのパンツじゃないとバランスがとれなくておかしくなっちゃうんですよね.理想と現実の違いです(笑).
ディテール
全体像に続いて,各所ディテールをみていきたいと思います.
フロントの合わせ
ファスナーだと味気ないので,ボタン仕様にしています.ボタンの数は多く,至極面倒ではあるもののこっちの方が断然雰囲気がでます.見えない部分にもこだわりたい派なら断然こっちがおススメ!
縦に並んだボタンをみてみると一直線ではなくボタンのつけ方がややカーブしていることが分かるかと思います.この意図とありがたみは僕にはよくわからないのですが,きっと計算しつくされた設計なのかなぁと想像するだけでも楽しいです.
プリーツ・ベルトループ・サイドポケット
2プリーツ仕様で,ベルトループ付きにしました.サイドポケットはストレートです.
僕の中では最近は2プリーツばかりです.この辺は数年前のメディアの影響もあると思いますが,プリーツがあるとやはりゆとりができて,座った際に楽な気がするんですよね.
サイドアジャスターによるベルトレス仕様も良いですけど,余計なパーツを付けたくなかったので,ベルトループ仕様にしました(ビスポークではないのでベルトループはあった方が無難です).
サイドポケットはプリーツと平行のストレートになります.斜めかストレートかを選ぶことになるのですが,スッキリみえるストレートの方を選びました.
バックポケット
バックポケットも有り・無し・片方だけの中から選ぶことができます.ポケットに物をいれるとシルエットは崩れてしまいますが,あると何かと便利なので両側につけてもらいました.
玉縁のミシンによる縫製ではでない少し歪な縫い目の雰囲気が良いですね.
裾
僕はスラックスの裾を4.5cmのダブルって決めています(いわゆる礼服を除く).
170cmちょいくらいの身長であれば4.5cmくらいの返しがあっても短足には見えないと信じています.
あふれ出る手縫い感
この洋服の最大の特徴ともいえるのが,ほとんどが手縫いに仕上げられているところになります.細部を細かく見ると同じ縫い目の箇所であってもピッチが違い,ミシンではなく手で縫われていることがよくわかります.
手縫いがミシンのどちらが良いかという議論は尽きませんが,手縫いの長所をあげるとすれば雰囲気とミシンでは出すことのできない糸の緩みといったところでしょうか.
ミシンよりも緩いテンションで縫われているので,生地と生地を縫い合わせてある箇所に本当にわずかな空間があります.うまく表現はできないですけど,全体的に丸みを帯びた印象を受け,着用していくうちにより体に沿って馴染んでくるんじゃないかって個人的には思っています.
おわりに
ほぼ手縫いに仕立てられた《ANTICO PANTALONE》のパンツを紹介しました.随所にみられる手縫いの要素は見ているだけでテンションがあがるパンツです.
念願だった秋冬用のスラックスを手に入れたので,すでに春に季節はむかってはいるものの寒い日には積極的に穿いていこうと思います.